メガネ、メガネ…
メガネがぽきりと折れました。
朝の満員の中央線の中です。
強度は万全なはずのチタン製のフレームのアームが根元からちぎれていました。
確かにこの数日、様子がおかしいとは思っていたのです。
妙にゆるくてぶらぶらする。
先週、Jリーグ最終節「ヴァンフォーレ甲府vsFC東京」戦を見に行き
泊まった石和温泉の宿で、枕元に置いた眼鏡を嫁に踏まれてしまったのです。
しかし、一見ちょっと歪んだだけにしか見えなかったので、
まさかそんなにも致命的な事態が進行していたとは思いもしませんでした。
内心の動揺を抑えながら、何事もなかったように壊れたメガネをしまいました。
「俺、べつにそんなに目、悪くないから。メガネなくてもべつに平気だから」
誰に聞かれるわけもないのに、心の中でそんなことつぶやきます。
本当はド近眼なくせに、誰に対して見栄を張っているのでしょう。
そんな私をあざ笑うかのように世界は焦点を失い歪んだ異界へと変貌しました。
人の波の押されながら、かろうじて新宿駅のホームに降り立ちましたが、
遠近感が測れないので階段をうまく下りれません。
いまにも踏み外して転落しそうで、恐怖に身がすくみます。
心まで折れてしまいそうです。
なんとか乗り継ぎをこなし会社にたどり着いたときには
すでにへとへとでした。
もちろんメガネがなければ仕事になりません。
目の前のモニターに表示されている文字が読めません。
メガネひとつ失っただけで、まったくの役立たずです。
ちゅーか「おっさん家帰れ」状態です。
結局、家に帰って予備の眼鏡を取ってきましたが、
その往復にかかった時間は3時間あまり。
家、遠いんですよ…。
日常では忘れがちな「メガネ」の大切さに思いをはせ、
そのありがたさを深々とかみしめる一日でした。
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