2008/1/21 Monday

8つの花卉

Filed under: ガーデニング・ペット — SCAT @ 19:14:26

暮れも押し迫った昨年の12月22日、父が死んだ。

肺気腫。
16年間患って、担当医が首を傾げること数回、
これまでは気力と体力で持ちこたえたけれど、
さすがに力つきたようだった。

入稿時期に重なった親不孝者は、
帰省したはいいがトンボ帰りで戻ってきて、
じっくりとお別れする暇もなかった。
昨夏の帰省で、なんとか孫の顔は見せられたが、
それが最後になった。
一昨年、買った家を見に来る予定もあったのだけれど、
それも叶わなかった。

離れて暮らしている以上、
ある程度の覚悟は出来ていたのだけれど、
思った以上に実感がわかない。
母と兄、妹とも、実感がわかないまま、
あれこれと忙しく葬儀に臨んだ。
通夜の日と本葬の当日は、
それまで寒風が吹き荒れたのが嘘のようにベタ凪で、
最後まで晴れ男だったようだ。

焼き場で、最後に我が家の庭の象徴として、
8種類の木の葉や実を棺に入れた。
ヒメシャラの実、
ユスラウメの葉、
キンポウジュの実、
シマトネリコの葉、
イブキジャコウソウの葉、
イロハモミジの葉、
ドウバネムノキの葉、
ハナセンナの葉。
ちょっとセンチメンタルだけれど、
こちらの8人の家族の代わりに、と合掌した。

思い起こせば7年前の冬、やはり危篤状態だった父の病床、
その枕元には赤々としたナンテンの実が飾られてあった。
正月用に、と知人が活けてくれたものだった。

とても植物が好きな父で、
家の改築の際に、私と同じ年の柿の木を伐ってしまったことを、
ずっと残念がっていた。
イチジク、コケモモ、イチゴ、アケビ、ウグイスカグラに木イチゴ……、
今の我が家に果樹を多く植えたのは無意識に、
食いしん坊で植物好きの父に見せたかったのかも知れない。

漸く地震の爪痕も癒えた故郷の町は復興逞しく、
新たな日常を紡ぎつつあった。
こちらに帰ってくると、待っていたかのように、
四季なりのイチゴが北風の中で青い実を付けていた。

見てくれているだろうか?

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